竹中直人×山田孝之×齊藤工の絶妙アンサンブル『ゾッキ』

豪華すぎるキャストに驚き、醸し出されるユーモアにクスクス笑ってしまうハートウォーミングな作品! 監督3人の絶妙なバランスが不思議な味わいを生み出します。こちらでは、本作で繰り広げられる群像劇の魅力にも触れてみます。

あらすじ

今日も地球は秘密と嘘で回っている。ある女は「秘密は大事に、なるべくたくさん持て」と助言する祖父が告白した自分の秘密の数に驚かされる。ある男は、当てがないというアテを頼りに、ママチャリに寝袋とエロ本を乗せて旅に出る。ある少年は成り行きでついた嘘をきっかけにやっと友達ができたものの、“あやや似の、いるはずがない自分の姉”に恋をしたと告げられてしまい、頭を悩ませる。ある青年は、今、消息不明の父と体験した幼い頃の奇妙な出来事を思い出していた。そして、日々をお客の少ないビデオ店でのアルバイトでなんとなく過ごして来た少年はある事件が海の向こうで起きたことを知る。それぞれに特別な秘密を抱える人々が織りなす日常と、彼らに訪れる少し不思議な奇跡を描く。

作品情報

公開日
2021年4月2日

上映時間
113分

原作
大橋裕之

監督・キャスト
監督:竹中直人、山田孝之、齊藤 工
脚本:倉持裕
主要キャスト: 吉岡里帆、鈴木福、満島真之介、安藤政信、ピエール瀧、森優作、九条ジョー、倖田來未、竹原ピストル、松井玲奈、石坂浩二、國村隼、松田龍平

予告編

公式サイト
https://zokki.jp/

感想レビュー

(C)2021「ゾッキ」製作委員会

ある地域で出会い、すれ違う人たちの光景が視点を変えて登場するのですが、これが実に楽しいのです。群像劇になっており、さっきのエピソードと同じ場所だ!とか、あの時のあの場所にこの人もいたのか!と嬉しくなるわけです。そんなワクワクが静かに続いていきます。

各エピソードのキャラクター全員が個性抜群。意外なキャストが意外な役柄で登場したりと、驚きもいっぱい。見たことのない表情を見せる出演者も多く、エピソードも丁寧に紡がれます。存在しない自分の姉に恋してしまった友人を、なんとか諦めさせようとする高校生の努力は涙ぐましく。竹原ピストル演じる男の少年魂には苦笑したり、切なくなったり。小さな微笑で観客を笑わせてくれる松田龍平を軸にして、色々な人が繋がるのも群像劇ならではの面白さ。

原作者の故郷であり、全面協力でロケを支えた愛知県蒲郡市の風景も温かみがあります。訪れたことはなくても懐かしさを感じる海辺の町。この町でこの人々は生きているのだなというリアリティがまた、温かみを加えているのでしょう。

俳優として活躍中の竹中直人、山田孝之、齊藤工が共同監督として、漫画家・大橋裕之の初期作品集を実写映画化したヒューマンコメディの本作。俳優や監督といった肩書ではなく、「とにかく 3⼈の監督による『ゾッキ』をやりたい、孝之と⼯と組みたい」と声をかけたという竹中直人監督。スムーズな映画の流れから3人の相性の良さも伝わってきます。

映画の評価
ハラハラワクワク
(4.0)
ドキドキ
(3.5)
考えさせられる
(3.5)
笑える
(3.5)
泣ける
(2.0)
総合評価
(4.0)

まとめ

(C)2021「ゾッキ」製作委員会

それぞれの「秘密」を中心にして、各エピソードのストーリー展開も予想を超えていました。監督たちの細やかな描写や、ご自身たちが俳優だからこその出演者への気配りも感じられます。3人の監督がそれぞれ、どのエピソードを撮ったかと想像しながら観るのも楽しいかもしれません。破天荒な設定にも愛情が溢れる、幸せな時間でありました。

(文:キタコ)

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