あらすじ

不動産屋に紹介された住宅地から抜け出せなくなったカップルの運命を描いたサスペンススリラー。新居を探すトムとジェマのカップルは、ふと偶然に足を踏み入れた不動産屋で、全く同じ家が建ち並ぶ住宅地「Yonder」を紹介される。軽い気持ちの内見を終えて帰ろうとすると、すぐ近くにいたはずの不動産屋の姿が見突如消える。2人で自力で帰路につこうと車を走らせるが、周囲の景色は一向に変わらない。住宅地から抜け出せなくなり戸惑う彼らのもとに、段ボール箱が届く。中には誰の子かわからない赤ん坊が入っており、2人は訳も分からないまま世話をすることに。追い詰められた2人の精神は次第に崩壊していき……。
感想レビュー

カンヌ国際映画祭でワールドプレミアとなり世界をざわつかせた怪作がついに日本にもやってきた!本作の題名「VIVARIUM」の意味が「動物の飼育場」という意味だったことを鑑賞後に知る。このタイトルの意味を深く調べていくと動物や植物を観察し、生きるためにコントロールしながら育てる「箱船」を意味することがわかってきた。題名の意味だけでもなんとなく「約束のネバーランド」や「進撃の巨人」といった雰囲気かなと予測できるだろう。そこに、謎の赤ちゃん登場で一波乱、二波乱…。本作を鑑賞するにあたり知っていると深くみれるポイントとして冒頭部分の理解度が重要な鍵を握る。「カッコウの托卵(たくらん)」という行為だと推測できるシーンがかなりリアルに流れる。托卵とは、 自分では子育てをせず他の鳥の巣に卵を産み、育てさせることである。托卵される仮親の産卵初期カッコウは巣の様子を伺い、仮親が巣を空けた隙に中の卵を一つ取り、自分の卵を産みつける。カッコウの卵は仮親の卵より早くかえるので、カッコウのヒナは仮親の卵を落とし、育ての親が運んでくるエサを独り占めして成長する。仮親の卵とカッコウの卵は模様が似ていることが多いけど、見破る鳥もいて托卵が成功する確率はあまり高くないようだ。カッコウのヒナが成長すると仮親より大きくなり、自分の姿とは違うのに仮親は献身的にエサを与えつづけるという。さらに、自分の親を知らないはずのカッコウがまた時期がくれば他の鳥の巣へ托卵するという。この謎はいまだ解明されていないらしい。これを人間世界でしてみたらどうなる的な物語が世にも奇妙で独特の色彩感覚と美術が世界観を盛り上げている。これはカンヌが好きそうな作品だと納得!
作品データ

原題/Vivarium
制作年/2019
制作国/ベルギー・デンマーク・アイルランド合作
時間/98分
ジャンル/サスペンススリラー
受賞歴/第52回シッチェス・カタロニア国際映画祭で最優秀女優賞を受賞
原作/
配給/パルコ
監督/ロルカン・フィネガン
出演者/ジェシー・アイゼンバーグ、イモージェン・プーツ
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