あらすじ
「東ベルリンから来た女」のクリスティアン・ペッツォルトが監督・脚本を手がけた、“水の精・ウンディーネ”の神話をモチーフに描く恋愛ドラマ。ベルリンの都市開発を研究する歴史家ウンディーネは、アレクサンダー広場近くのアパートで暮らしながら博物館でガイドとして働いている。恋人ヨハネスが別の女性に心変わりし悲嘆に暮れる彼女の前に、愛情深い潜水作業員クリストフが現れる。2人は強く惹かれ合い、新たな愛を大切に育んでいく。やがて、ウンディーネが何かから逃げようとしているような違和感をクリストフが感じ取ったことをきっかけに、彼女は自分の宿命に直面することになる。「婚約者の友人」のパウラ・ベーアが神秘的なウンディーネを妖艶に演じ、2020年・第70回ベルリン国際映画祭で女優賞を受賞。クリストフ役に「希望の灯り」のフランツ・ロゴフスキ。
感想レビュー
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幻想に満ちた映画だ。愛の裏切りと喜びを描いて、美しいおとぎ話のようだ。モチーフになった神話は「愛する男が裏切ったとき、その男は命を奪われ、ウンディーネは水に還らなければならない」(公式より引用)という物語。何も知らずに観ても愛憎ゴーストラブストーリーとして楽しめる気配もあるが、この設定を知らなければ、主役である女性(その名もウンディーネ)の行動は少々エキセントリックに映るかもしれない。元ネタを知ってから観ると、唐突に思える展開にも気持ちがはぐれずに済むだろう。
神話をベースに敷いたことで、現代的な景色の中に突如として神秘性が現れる。自然を写す映像は美麗で、水中シーンも印象的。特に、水辺のショットが人魚姫のようで目を惹かれた。まさしく『人魚姫』はアンデルセンがウンディーネ神話を元に書いたものだ。聞こえてくるのは水の音だけ、という時間が格別。愛に出会いながら愛に苦しむ、それぞれの姿が切ない。ドイツ統一前と現在のベルリンをウンディーネに語らせるのも、何やら人間ではない俯瞰の目線も感じさせた。バッハの調べに揺れる水面。愛に囚われる主演2人が魅力的。ラストカットも素晴らしい余韻だ。
作品データ

原題/Undine
制作年/2020年
制作国/ドイツ・フランス合作
時間/90分
ジャンル/ファンタジー
受賞歴/パウラ・ベーア:ヨーロッパ映画賞女優賞、モントクレア映画祭俳優賞、ベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)
原作/
配給/彩プロ
監督/クリスティアン・ペッツォルト
出演者/パウラ・ベーア、フランツ・ロゴフスキ、ヤコブ・マッチェンツ、マリアム・ザリー
[…] 映画の評価ハラハラワクワク (3.5)ドキドキ (4.0) 考えさせられる (4.0)笑える (2.0)泣ける (4.0)総合評価 (3.5) キタコの映画丸かじり2本目『水を抱く女』 […]