編集長のひとりごと第13話「トゥルーノース」

北朝鮮強制収容所の過酷な環境で生きていく家族とその仲間たちが成長していく姿を、生存者証言を参考に描いた長編アニメーション。衝撃的だけど、一度は見ておくべき作品。

あらすじ

(C)2020 sumimasen

1950年代から始まった在日朝鮮人の帰還事業により北朝鮮に渡ったヨハンの家族は、両親と幼い妹とともに金正日体制下の北朝鮮で暮らしていた。しかし、父親が政治犯の疑いで逮捕されたことにより、母子は強制収容所に入れられる。極寒の収容所での苛烈な生活に耐え忍びながら、家族はなんとか生き延びていたが、収容所内の食料確保によるトラブルによって母が殺害され、自暴自棄となったヨハンは次第に追い詰められていく。そんなヨハンは、死に際に母が遺したある言葉により、本来の自分を取り戻していく。

感想レビュー

(C)2020 sumimasen

我々が住む日本の海を渡った先にある朝鮮半島。すぐ近くに位置するけれど、その国の内情については謎も多く知っているようで知らないことが多い。北朝鮮に住む人は貧富の差がとても大きく、餓死する人もいるという話をニュースで聞いてなんとなくは知っているだろう。だけど、それ以上に踏み込んだ内容までは自分から調べないとわからない。収容所での過酷な生活についてなどを10年もにわたる現地の人からのインタビューなどからひとつの作品として制作した監督の執念は一体どこからきたのだろうか…。アニメーションながら語られる内容のヘビーさから「はだしのゲン」を鑑賞した時のことを思い出した。直視できないでいた現実というものをアニメーションを通して知った瞬間という共通点。隣の国で今もなお起こっているこの現状がとても信じられないけれど「これが事実だ!」と突きつけられたようだった。

知識として知るべきことがつまった作品だったのでこれは学習の場である学校などで見てもいいのではないかと提案したい。選挙権も引き下げられて、国内だけではなく世界情勢についても自身で興味を持ちアンテナをはっていくことが求められている。それは学校で教えてくれる勉強だけではなくこのような教材としても利用できる秀作を私たち大人が広めていく必要があるだろう。私は自分の子どもにいつかみせたいと思った。とても勉強になり、得るものが大きい94分であった。

映画の評価
ハラハラワクワク
(4.0)
ドキドキ
(3.0)
考えさせられる
(5.0)
笑える
(1.0)
泣ける
(5.0)
総合評価
(4.5)

作品データ

(C)2020 sumimasen

原題/True North

制作年/2020

制作国/日本・インドネシア合作

時間/94分

ジャンル/アニメーション

受賞歴/第33回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門上映作品
ワルシャワ国際映画祭 審査員特別賞受賞
ナッシュビル映画祭 グランプリ受賞
プチョン国際アニメーション映画祭 特別優秀賞受賞

原作/

配給/東映ビデオ

監督/清水ハン栄治

出演者/

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