スパイ小説の名作を英国演技派を集めて映画化『裏切りのサーカス』

スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの代表作を「ぼくのエリ 200歳の少女」のトーマス・アルフレッドソン監督、ゲイリー・オールドマン主演で映画化したスパイスリラー。1960年代のロンドン。ある作戦の失敗でイギリスの諜報機関=サーカスを引退していたジョージ・スマイリーに、特別な任務が下される。それは、いまもサーカスに在籍する4人の最高幹部の中にいる裏切り者モール(=二重スパイ)を探し出せというものだった。共演にコリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハート、ベネディクト・カンバーバッチなどの英国新旧演技派俳優が集結した作品。

作品情報

Jack English (C) 2010 StudioCanal SA

公開日

2012年4月21日

上映時間

128分

監督・キャスト

監督:トーマス・アルフレッドソン

キャスト:ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハート、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロング

公式サイト

感想レビュー

Jack English (C) 2010 StudioCanal SA

原作は実際に第二次世界大戦中にMI6のスパイとして活動した経験を持つジョン・ル・カレ。「寒い国から帰ったスパイ」や「ナイロビの蜂」など映画化されたた作品も多いカレの代表作と言える“スマイリー”シリーズの「ティッカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」を完全映画化。主演のゲイリー・オールドマンの主演男優賞を筆頭にこの年のアカデミー賞三部門にノミネートされました。映画制作時(2011年)には原作者のジョン・ル・カレはまだ存命(2020年没)で、映画の完成度を高く評価しています(アカデミー賞では脚色賞にノミネート)。

映画の見どころはなんと言っても新旧英国俳優の演技合戦でしょう。ゲイリー・オールドマン、コリン・ファース、トム・ハーディ、ジョン・ハート、ベネディクト・カンバーバッチ、マーク・ストロングなどなど、この作品の前後でアカデミー賞の受賞やノミネートを経験している演技派が揃い、徹底した“静の演技合戦”を繰り広げます。

Jack English (C) 2010 Stud
ioCanal SA

主役のゲイリー・オールドマンはジッと腰を落ち着かせた演技を見せる一方で、積極的に動き回るのがベネディクト・カンバーバッチとトム・ハーディです。彼らがいつも以上に見せる“若さ”が、またベテラン陣が演じるキャラクターのこれまでの“人生の苦さ”を際立てます。異色のヴァンパイアホラー「僕のエリ、200歳の少女」で注目を浴びたトーマス・アルフレッドソン監督が見事な演出手腕を見せています。最近新作の話が聞こえてこないのが少し残念ですね。

映画の評価
ハラハラワクワク
(4.5)
ドキドキ
(4.0)
考えさせられる
(4.0)
笑える
(4.0)
泣ける
(3.0)
総合評価
(4.5)

まとめ

Jack English (C) 2010 StudioCanal SA

スパイものというと「ミッション・インポッシブル」や「ジェイソン・ボーン」「007」シリーズを想像して、バリバリのアクション映画を想像しがちですが、この「裏切りのサーカス」が同じスパイをテーマにした作品としては対極にある映画と言えるでしょう。アクションと言えるようなシーンはほぼ皆無と言っていいのではないでしょうか?だからと言って物語が弛緩することはなく、逆に徹底的に緊張感を高め続けたままエンディングまで駆け抜けます。映画の登場人物同様見る側も一瞬のスキも許さない超頭脳戦映画となっています。

(文:村松健太郎)

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