母性が目覚めたその先に見える景色は…「ソーレ ー太陽ー」

カルロ・シローニ監督のデビュー作は養子縁組と人身売買の物語で、親子の関係や親になることについて問いかける。ヴェネチア国際映画祭での受賞を皮切りに世界約40カ国の映画祭で上映され、ヨーロッパ映画賞ではEuropean Discovery(最優秀長編初監督賞)を受賞した本作。イタリアの代理出産についての考え方について解説する。

あらすじ

貧乏なエルマンノと、赤ちゃんを売るためにイタリアに来た妊娠7カ月のポーランド人のレナ。2人は見知らぬ関係だったが、子供を望む叔父が親戚間の養子縁組で新生児を譲り受けるために、エルマンノは父親のふりをすることになる。

作品情報

イタリア映画祭2021オンライン上映作品

上映時間
102分

監督・キャスト
監督:カルロ・シローニ
主要キャスト: サンドラ・ジマルスカ、クラウディオ・セガルッショ

公式サイト

イタリア映画祭2021 公式サイト:朝日新聞デジタル (asahi.com)

感想レビュー

個人的に2人の子供を育てる母親という立場から本作をみると胸が張り裂ける気持ちになった。この物語の少女レナの気持ち全てを理解することは難しい。というのも、移民の事情を抱えているからこそ自分の子供を人身売買で売ることを決意している。移民がゆえの事情ということでの金銭的な苦労については日本人には少しピンとこない話題なのかもしれない。

けれど、子供が産まれるまでの様々な不安な気持ちと産んでから目覚める母性だったり難しいこと全て置いておいても我が子が可愛いという感情の芽生えが彼女の決断を迷わせるそんな気持ちは痛いほどよくわかる。産まれたばかりの子供はミルクを必死で飲んでお腹いっぱいになったら眠り、おしっこやうんちをして泣いて…「生きる」ことに必死でその姿を見守っているだけで周りに居る人は自然と笑みがこぼれ、守ってあげたいと思う。父親のフリをしていたエルマンノもその一人であり、父性と叔父には逆らえない立場であるのが切なかった。

イタリアでは、法律で代理出産を禁止している。そのため、本作のように人身売買を合法な養子縁組に見えるように回りくどい手を使っている。叔父夫婦がしていることは法律上では悪いことなのかも知れないけれど、子供を望んでいるけれど授かれない夫婦にとってのひとつの手段である代理出産がみとめられない以上このような方法をとるしかなかったという複雑な事情が絡み合っている。最近の邦画では「朝が来る」に似ている内容の作品だった。

映画の評価
ハラハラワクワク
(4.0)
ドキドキ
(3.5)
考えさせられる
(4.0)
笑える
(1.0)
泣ける
(4.0)
総合評価
(3.5)

まとめ

題名の「sole」は日本語訳で直訳は「太陽」だけど「偉大な存在」という意味合いでとらえるといいのではないかと鑑賞後に感じた。子供は尊い存在であり、なににも代えがたい…そんなメッセージがふんだんにつまった作品だった。

(文:編集長)

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