傑作ロードムービーがリアルな理由とは『ノマドランド』

家財道具を積んだ車で移動しながら暮らす人々の姿を追うドキュメンタリーのような、温かみのある優れたフィクションです。溢れ出すリアリティに圧倒されました。いかに新しい手法で作られた映画なのか、こちらで紐解いてみます。

あらすじ

アメリカ西部の路上に暮らす車上生活者たちの生き様を、大自然の映像美とともに描いたロードムービー。ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまった。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることを選ぶ。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。

作品情報

公開日
2021年3月26日

上映時間
108分

原題
Nomadland

監督・キャスト
監督:クロエ・ジャオ
主要キャスト: フランシス・マクドーマンド、デビッド・ストラザーン、リンダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズ

受賞歴
第77回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞、第45回トロント国際映画祭観客賞、第78回ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ)と映画監督賞 ほか

予告編

公式サイト
https://searchlightpictures.jp/movie/nomadland.html

感想レビュー

(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

アメリカの車上生活者の来歴は様々で経済的な理由もある反面、それだけではない心情が浮かび上がってきます。放浪への憧れは若い方にも訴えかけるものですが、中高年以上の年代の方にはさらに身につまされるエピソードの数々ではないでしょうか。これからの生き方を問われるようなリアリティです。

鑑賞しているうちに不思議な感覚に包まれるかもしれません。フィクションとノンフィクションの間にあるようなストーリーで、登場人物も実にリアル。と言うのも、主演のフランシス・マクドーマンドとデビッド・ストラザーン以外はノマド生活者のご本人たちが出演されているとのこと。全出演者がとても自然にありのままに映し出されます。主人公が働く職場もそれぞれ、稼働中に撮影されたのだとか。いかに監督が粘り強く撮影されたか、想像できるというものです。

マクドーマンドは旅する人々の中に入り込み、5ヶ月間を過ごしたのだそう。クロエ・ジャオ監督をはじめ、撮影クルーは25人だけ。小規模な撮影隊が作った作品が各国で高い評価を得て各賞を受賞している成果には、これからの映画制作の変わり目も感じます。本作は自然や生活といった環境雑音も素晴らしいのですが、先日、音響技師であるマイケル・ウルフ・スナイダー氏(35)が自死されたニュースが飛び込んできました。刺激的な撮影現場から一転、外出自粛が辛かったのではと父親のコメントにあります。ぜひ、映画を縁取る細やかな音にも耳を澄ませていただきたい、見事な音響です。

映画の評価
ハラハラワクワク
(4.0)
ドキドキ
(4.0)
考えさせられる
(5.0)
笑える
(3.0)
泣ける
(3.5)
総合評価
(5.0)

まとめ

(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

映像が物語る映画でもありました。セリフが無い数分間に思いが込み上げてきます。労働をしながら自ら作り上げた車で眠る主人公の体温も伝わってくるような丹念さ。寂しさが投影されたような風景が、観終わった時にはまた違って見えてくるかもしれません。コロナ禍の前に撮り終えた本作が各地を渡り歩くロードムービーで、出会う人々との絆が描かれることにとても感慨深くなる光景です。

(文:キタコ)

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