村松の映画に一言第6話「ノマドランド」

ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド 漂流する高齢労働者たち」を原作に、新鋭クロエ・ジャオ監督がフランシス・マクドーマント主演で映画化した異色のロードムービー。

近年、アカデミー賞の最短距離・必勝リレーなりつつあるヴェネチア国際映画祭金獅子賞、トロント国際映画祭観客賞を受賞しています。

あらすじ

ネバダ州の企業城下町で夫と共に暮らしておた60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまいます。町は丸ごとなくなり、人々は散り散りに。

キャンピングカー仕様に改造した車に全てを詰め込んだファーンは、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる旅を続けていきます。

感想レビュー

今年2021年(2020年作品対象)のアカデミー賞は新型コロナウィルスの感染拡大の影響もありハリウッドメジャー作品が公開されなかったこともとあり、どこか地味なタイトルが並んでいるように見えます。

しかし、一本一本を見ていくと様々な形でのアメリカの姿、そして普遍的な人間の在り方を見て通ることができます。本作とリー・アイザック・チョン監督「ミナリ」などはアジア系の人間の目線から見たアメリカという共通項もあります。

本作「ノマドランド」は季節労働、車上生活、高齢化などアメリカの一面を見ることができますし、「ミナリ」では韓国系アメリカ移民を主人公に置いたことで現代の開拓史としての一面を感じさせます。「Mankマンク」はアメリカ映画オールタイムベストで必ず一位になる「市民ケーン」の裏側を描きながら物語を生み出すものの姿を描きました。「シカゴ7裁判」は異色の反戦映画ですし、「ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア」「マ・レイニーのブラックボトム」は人種問題、黒人社会、黒人文化を描いています。

どれも(この「ノマドランド」も含めて)厳密に時代を見ていくと“現代”というモノを描いてるものが一つもありません。しかしどれも現代のアメリカ、さらには世界各地の人々の心のどこかに引っ掛かるテーマばかりです。

ホームレスではなくハウスレスと言い切る主人公ファーンはフランシス・マクドーマンドの凛々しい演技も相まって非情に逞しいキャラクターとなっています。背景に移るアメリカ各地の風景の美しさもあって、どこか寓話的な部分も感じることができます。

監督のクロエ・ジャオは30代の中国・北京出身の女性監督。「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー監督以来の女性監督としてのアカデミー賞監督賞受賞の可能性が非常に高い立場にいます。そんな彼女の次の映画はなんとマーベルスタジオの超大作「エタナールズ」。アンジェリナ・ジョリー以下オールスター多国籍キャストを束ねています。

(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.
映画の評価
ハラハラワクワク
(4.0)
ドキドキ
(4.0)
考えさせられる
(5.0)
笑える
(3.0)
泣ける
(3.0)
総合評価
(4.5)

作品データ

(C) 2021 20th Century Studios. All rights reserved.

原題/Nomadland

制作年/2020

制作国/アメリカ

時間/108

ジャンル/ドラマ

受賞歴/第77回ベネチア国際映画祭金獅子賞、第45回トロント国際映画祭観客賞、第78回ゴールデングローブ賞作品賞・監督賞、第55回全米批評家協会賞監督賞、第46回ロサンゼルス映画批評家協会賞監督賞、第86回ニューヨーク映画批評家協会賞監督賞 他多数

原作/ジェシカ・ブルーダー「ノマド 漂流する高齢労働者たち」

配給/ディズニー

監督/クロエ・ジャオ

出演/フランシス・マクドーマンド、デビット・ストラザーン、リンダ・メイ、スワンキー、ボブ・ウェルズ

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