FHの映画の小窓 第6回『マ・レイニーのブラックボトム』

あらすじ

Netflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』独占配信中

1927年のある暑い日、シカゴのスタジオで”ブルースの母”と呼ばれる歌手マ・レイニーのレコーディングが行われた。マ・レイニーのバンドのトランペッターであるレヴィーは”自分の新しいアレンジ”を主張するが、マ・レイニーとバンドメンバーの理解を得られず緊張感が漂う。それでもなんとかレコーディングが完了しほっとしたのも束の間、白人プロデューサーの横暴にマ・レイニーとレヴィーはそれぞれの苦しみを噛みしめる。

感想レビュー

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『マ・レイニーのブラックボトム』はオーガスト・ウィルソンの同名戯曲を原作とした映画で、単なる音楽映画ではなく、アフリカ系アメリカ人の抱える苦しみの歴史や魂のあり方を現代人にあらめて伝える作品だった。

マ・レイニーは実在の同名歌手をモデルにしたキャラクターだが、彼女と対立するキャラクターであるレヴィーは複数のミュージシャンをモデルにしていると推測される。1920年代という時代を考えると、コルネットを愛用しているところも含め、やはり若き日のルイ・アームストロングを連想する人は多いようだ。レヴィーの性格や本作の内容的にはジェリー・ロール・モートンというミュージシャンもモデルの一人だと言われていて、その他にも著名な黒人ジャズトランペッターの面影を指摘する声もある。
ちなみに、事実としてマ・レイニーとルイ・アームストロングは1924年に共にレコーディングを行っており、その時録音した数曲が著作権が切れたこともありYoutubeなどで今でも聴くことができる。

ともすれば本作のトランペッター、レヴィーはルイ・アームストロングになれなかった男と言えるだろう。歴史に名を残し今なお広く知られるミュージシャンがいる一方、その裏には歴史に埋もれていった、あるいは時代に殺されていった人々がいる。マ・レイニーの純粋なブルースに対して新時代のアレンジを加えようとするレヴィーは、その後の歴史が示すように”ある意味では”正しかったはずだ。しかしレヴィーの前には開かずの扉が立ちふさがる。

本作を理解する上で挿入楽曲はそれなりに重要なのだが、日本の吹き替えや字幕はなぜか英語の歌詞を無視することが多く、本作でも今のところ歌唱シーンになると英語音声以外の言語情報がすっぽ抜けるのが残念である。レヴィーが自作の新曲をプロデューサーに歌ってみせるシーンがあるのだが、これから観る人はレヴィーの”Jelly Roll”の行方に耳を凝らしてほしい。
本作がチャドウィック・ボーズマンの遺作となったのは残念だが、レヴィーに入り込んだ彼の最後の演技はまぶたに焼き付けるにふさわしい名演だったと思う。

いい意味で鋭利なテーマを持った本作だが、音楽映画としてもすばらしく、リアルに再現された当時のテントステージシーンや、楽屋でのバンドマンの掛け合いのシーンなどはそれだけで純粋に楽しめるものになっている。掛け合いのシーンの独特のフローを楽しむためにも英語音声での視聴をぜひおすすめしたい。

映画の評価
ハラハラワクワク
(3.5)
ドキドキ
(4.0)
考えさせられる
(4.5)
笑える
(3.5)
泣ける
(4.5)
総合評価
(4.0)

作品データ

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原題/Ma Rainey’s Black Bottom

制作年/2020年

制作国/アメリカ

時間/94分

ジャンル/ドラマ、音楽

受賞歴/第78回 ゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞(ドラマ)

原作/オーガスト・ウィルソン『Ma Rainey’s Black Bottom』

配給/Netflix

監督/ジョージ・C・ウルフ

出演者/ヴィオラ・デイヴィス、チャドウィック・ボーズマン、グリン・ターマン、コールマン・ドミンゴ、マイケル・ポッツ、ジョニー・コイン、テイラー・ペイジ、ジェレミー・シェイモス、ドゥーサン・ブラウン、ジョシュア・ハート

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