本作はインド映画だけど歌わない!踊らない!そして105分とコンパクト!インドのお弁当配達システムについての解説。そして、めぐり逢わせのお弁当は誰の仕業だったのか?についても深掘りしている。
あらすじ
インドで広く利用されている実在の弁当配達システム(ダッパーワーラー)を題材に、誤配送の弁当がもたらした男女の偶然の出会いと心の触れ合いを描く。大都市ムンバイのオフィス街の昼時にダッバーワーラーと呼ばれる弁当配達人が、慌ただしく複数の弁当箱を配って歩く。ある日、主婦イラが夫の愛情を取り戻すために腕をふるった4段重ねの弁当が、男やもめのサージャンのもとに誤って届けられる。イラは空っぽになって戻ってきた弁当箱を見て喜ぶが、その弁当を食べたはずの夫からは何も反応がない。不審に思ったイラは翌日、弁当に手紙を忍ばせたことから文通がはじまる。
作品情報
公開日
2014年8月9日
上映時間
105分
監督・キャスト
監督:リテーシュ・バトラ
主要キャスト: ニムラト・カウル、イルファン・カーン、ナワーズッディーン・シッディーキー、リレット・ヂュペイ、ナクル・ヴァイド
予告編
公式サイト
映画『めぐり逢わせのお弁当』公式サイト (archive.org)
感想レビュー

本作の重要な鍵となるお弁当を運ぶ職業「ダッパーワーラー」という存在に日本人は馴染みがなくどういう存在なのだろうか?と思うが、インドでは昔カースト制があったことと宗教上の理由もあり他人が作った食べ物を昼食に食べることが難しかった為に現われたシステムのようだ。現在も利用されているシステムではあるもののお店で作ったお弁当の宅配も広がっているようである。驚くべきは沢山のお弁当を預かっても運び間違いは600万個に1個程度しかおこらないという統計結果があるということだ。なんてプロフェッショナルな仕事をする人たちなんだろうか。
では、このお話の誤配は600万文の1の確率で起こったのか?きっと違うような気がする。イラの上の階に住んでいるおばさんは声だけ聞こえる存在として登場する。おそらくこのおばさんは神という存在なのではないだろうか?そしてお弁当の誤配こそ神様のいたずらであった可能性もある。手紙を書くようにアドバイスしたのもおばさんだし、後々考えるとおばさんの助言がイラの人生の分岐点で大きな影響をあたえている。すべては、素直におばさんの声を受け入れるイラの行動があったから起こった物語なのだ。
そして、好きな男性の胃袋を掴むという行為は万国共通なんだという発見。もし、自分が作ったお弁当を旦那が食べていないと気がついたらその時点で本人に伝える人が多いだろう。それが出来ないということで夫婦の破綻した関係を表現していたのが本作で最もせつなく悲しい瞬間だった。
お弁当のご配達から始まる文通をする男女2人の姿は年甲斐もなくるんるんとしていてみているこっちもいつのまにかはにかんでいる。ラストの展開も観客に委ねるというかたちで作品に奥行きをもたせている点に好感をもてた。
まとめ

私のおすすめのインド映画No1.は「マダム・イン・ニューヨーク」なのだが、本作も夫婦関係の見直しという点でテーマに共通点があり好きな作品だった。結婚して毎日上手くいくばかりではない夫婦生活の隙間時間におすすめしたい作品である。
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映画工房より中井圭推薦作品「めぐり逢わせのお弁当」