あらすじ
20歳のパトリックは自殺を図り、昏睡状態で病院に運ばれる。パトリックが生死をさまよう中、知らせを聞いた親戚や友人が一堂に会すも、ぎくしゃくとした空気が流れ…。「あの頃エッフェル塔で」のアルノー・デプレシャン監督が30年前に発表し、一躍注目を集めたデビュー作。生と死をテーマに据え、現代フランス映画の流れを生んだ作品。
クロスレビュー
静かな映像美と距離の近さを感じる登場人物たちが良い。自殺を図ったパトリックは”シュレディンガーの猫”のように生と死が重なり合った状態で入院中、作中では一切姿を見せない。パトリックの容態を見据えに集まった親族一同の数日の群像劇で、パトリックのいとこ・パスカルを中心に描かれている。親族の不幸に際する不確かで不安な、日常と非日常の境界の時間が描かれていて、最終的にはパスカルによってパトリックの生死の結果が観測・確定される。しかしながら映し出される情景を観ていると、どうもパスカルの視点に乗っているわけではない自分の居所を感じる。演出や撮影の妙だと思うが、自分がこの集まりに参加した親族の1人であるような気分になるのだ。この点に関して答えとなるような動画がUniFranceのYoutubeに上がっている。MyFFFに際してのデプレシャン監督の自作解説動画だ。自動翻訳や英語字幕を用いないとならないが、内容解説以外にもフィルムの復元やMyFFFへの招待などについても監督が好意的に語っている良い動画だと思うので、興味のある人は観てほしい。
動画まで観てられないよという人は、監督が「フェザーショット」と呼んでいる”映画の途中に何度か挟まれる無人のシーン”について考えてみると良いと思う。
とある出来事がきっかけで一気にギクシャクしだす人間たちの描き方はフランス映画、ヨーロッパ映”らしく”、女性がポイント、ポイントで重きをなすのも”らしさ”を感じます。自殺に関してもキリスト教圏(フランスではカトリックが最大宗派とのこと)ならではの表現で評価・論じられているのも“らしさ”ですね。映画自体が1990年の作品で、今現在とはまた違うところもあるのでしょう。コロナ禍で大きく揺れるヨーロッパ、フランスの姿、生死の在り方を改めてどう描くのか見てみたくなりました。
”
作品データ
原題/La Vie des morts
制作年/1990年
制作国/フランス
時間/52分26秒
ジャンル/ドラマ
受賞歴/
原作/
配給/
監督/Arnaud Desplechin
出演/Marianne Denicourt、Thibault de Montalembert、Roch Leibovici、Nikola Koretzky