恋というものの全ての側面が詰まったラブストーリー。身を焦がすような切なさです。大倉忠義と成田凌の熱い芝居、そして劇中に登場する映画『オルフェ』が物語る意味についても触れてまいります。
あらすじ
優柔不断な性格から不倫を重ねてきた大伴恭一の前に、卒業以来会う機会のなかった大学の後輩・今ヶ瀬渉が現れる。今ヶ瀬は妻から派遣された浮気調査員として、恭一の不倫を追っていた。不倫の事実を恭一に突きつけた今ヶ瀬は、その事実を隠す条件を提示する。それは「カラダと引き換えに」という耳を疑うものだった。恭一は当然のように拒絶するが、7年間一途に恭一を思い続けてきたという今ヶ瀬のペースに乗せられてしまう。やがて、恭一は今ヶ瀬との2人の時間が次第に心地よくなっていく。
作品情報
公開日
2020年9月11日
上映時間
130分
原作
水城せとな「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」
監督・キャスト
監督:行定勲
主要キャスト: 大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ
予告編
公式サイト
http://www.phantom-film.com/kyuso/
感想レビュー

モテるがゆえに人に流されやすい恭一はゲイへの躊躇いがあり、恭一を慕い続けてきた今ヶ瀬には負い目のようなものがあります。そんな2人の心情を丹念に見せることで、映画の中心に純真さが生まれていました。
セクシャルな場面も多く、ラブシーンやベッドシーンもたびたび登場。その意味でも、2人の役は俳優にとって挑戦だったのではと想像できます。が、「ためらいも気負いも無かった」と言う大倉忠義。関ジャニ∞でのアイドル時間とは違う表情にハッとします。ほぼ時間通りの順撮りだったことで、心情の移り変わりと共に覚悟のような凛々しさも増しているのが印象的です。
成田凌は瞳の潤いを軸に芝居を作ったそう。実に愛らしいキャラクターで、性別を超えた魅力に満ちています。特に、2人が屋上で興じる乳首当てゲーム(!)での無邪気さは猛烈!
劇中に登場する映画『オルフェ』(1950年)は、死者に惹かれる男の物語。相手を思うからこそ、突き放す愛が描かれます。そのモチーフに登場人物の心情を投影させた行定勲監督の丁寧なアプローチで、さらに切なさが増していました。
まとめ

同性の恋だから生まれる葛藤や嫉妬は、異性間のそれとは乗り越えるべき壁の高さも違うはず。反面、障害が多いほどに恋は大きくなっていくものかもしれません。人気を誇る2人の俳優が全身で演じた愛の形。同性異性を問わず、彼らが抱える葛藤や嫉妬といった恋の苦しみには、きっと共感が生まれることでしょう。
(文:キタコ)