「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」「バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら」の松居大悟監督が、自身の体験を基に描いたオリジナルの舞台劇を映画化。
6人の仲間のうち、主人公・吉尾和希を成田凌、舞台演出家として活躍する藤田欽一を高良健吾、欽一の劇団に所属する舞台俳優・明石哲也を若葉竜也、後輩で唯一の家庭持ちであるサラリーマン・曽川拓を浜野謙太、同じく後輩で会社員の田島大成を藤原季節、地元のネジ工場で働く水島勇作を目次立樹がそれぞれ演じる。
あらすじ

高校時代に帰宅部でつるんでいた6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まった。
久しぶりの再開も高校時代のテンションのまま。恥ずかしい余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返る。
自分たちは今も友だちで、これからもずっとその関係は変わらないと信じる彼らだったが……。
やがて、彼らは認めなくてはいけないある事実と正面から向かい合うことを迫られていく。
作品情報

公開日
2021年4月29日
上映時間
96分
監督・キャスト
監督/松居大悟
キャスト/成田凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、高良健吾、飯豊まりえ、内田理央、小林喜日、都築拓紀、城田優、前田敦子、滝藤賢一、近藤芳正、岩松了
感想・レビュー

くれなずめ(=暮れtなずむ)というのは夕暮れの直前、日が暮れる直前のタイミングを表す言葉で、映画ではイコール死んだ友人との別れ、青春の終わり、死者の成仏を重ねています。
最初はもっと見ていて居づらい感覚を感じるコメディになるのかと思いましたが、思いのほかちゃんと最後まで見れていました。
一番の要因はやはり、徐々に核心・真実に迫っていく作劇にあるかと思います。
主人公の抱えるある事情が明らかになることで、それまでのそしてそれ以降のシーンや言動の意味合いが大きく変わっていくのを感じることができ、それゆえに少し寒さを感じるようなギャグパートも、必要なパートとして機能しているので最後まで見ることができました。
成田凌は独特の異物感、違和感を持っている俳優とで、こういうキャラクターがはまります。いつも正統派な雰囲気を醸し出しながら登場し、最後はものすごい異端の存在として去っていくという立ち位置が似合います。中小規模作品にも多数出演している成田凌ですが、その異端者ぶりは「スマホを落としただけなのに」シリーズや「ビブリア古書堂の事件手帖」などのメジャー作品でも変わりませんね。「カツベン!」や「弥生、三月 君を愛した30年」でも何とも言えない不安定さを残しています。
この「くれなずめ」では脚本を読んだ成田凌が是非出演したいと手を挙げたそうですが、彼を主役の吉尾に持ってこれた時点で映画「くれなずめ」はある意味、勝ったと言えるのではないでしょうか?

まとめ

ワチャワチャした青春の残りかすの物語かと思ったら、それに決着をつけるために、大人になること、別離を受け入れることのイニシエーションの物語でした。
もともと松居監督によって作られて舞台の映画化と言うこと、じわじわと核心に迫っていく流れはいかにも舞台作品という様な感じがします。ネジを演じた目次立樹はオリジナルの舞台からの続投だったりします。
終盤は舞台臭さが少し残っていて、それが気にもなるのですがそこにウルフルズの「それが答えだ!」が入ってきて、上手い具合に盛り上げてくれます。世代的にもビタっと来ることもあるのですが、勢いのある楽曲の強さはこういう時にはとても効果的ですね。
(文:村松健太郎)
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