編集長のひとりごと第10話「くれなずめ」

「アズミ・ハルコは行方不明」「君が君で君だ」の松居大悟監督が、自身の体験を基に描いたオリジナルの舞台劇を映画化。6人の仲間のうち、主人公・吉尾和希を成田凌、舞台演出家として活躍する藤田欽一を高良健吾、欽一の劇団に所属する舞台俳優・明石哲也を若葉竜也、後輩で唯一の家庭持ちであるサラリーマン・曽川拓を浜野謙太、同じく後輩で会社員の田島大成を藤原季節、地元のネジ工場で働く水島勇作を目次立樹がそれぞれ演じる。

あらすじ

©2020「くれなずめ」製作委員会

高校時代に帰宅部でつるんでいた学年も違う6人の仲間たちが、友人の結婚披露宴で余興をするため5年ぶりに集まった。恥ずかしい余興を披露した後、彼らは披露宴と二次会の間の妙に長い時間を持て余しながら、高校時代の思い出を振り返る。自分たちは今も友だちで、これからもずっとその関係は変わらないと信じる彼らだったが……。

感想レビュー

なにもなかった高校生活を思い返せばやっぱりあれは青春だったんだとしみじみと感じる本作の題名に「くれなずめ」はぴったりだ。いくつかの意味を重ねてつけられた題名は最後まで作品を鑑賞することでよりしっくりとくる。若いからこそできたバカなノリは年をとればとるほど出来なくなっていく。そんな仲間と久しぶりにあってバカ騒ぎ出来る最後のチャンスがもしかしたら結婚式の余興なのかもしれない。余興で使用する楽曲がウルフルズの「それが答えだ!」ということで、とても気分をハイにさせて観客巻き込み型の空間へと一気に変貌させる。

本作を監督した松居大悟は時系列をうまく組み替えて物語のアップダウンを作ることが非常にうまい人物だ。「アズミハルコは行方不明」では原作とは違う時系列に配置換えし映像化することで新たに生まれる作品の魅力をうまく作り出していた。

本作はオリジナルの脚本で一度舞台化したものを映画にしている。そのためなのかどこか舞台をみている感覚になる場面が多数存在する。作品の中心となる6人の俳優はみな個性的な役を演じることが多いためどのようなバランスをとるかで作品のテイストがだいぶ変わってきそうだが良いあんばいに監督がまとめ上げている。主演の成田凌はどこか闇を抱えていたり、なにか裏のある役を演じることが多く、甘いマスクの裏の顔として振りきれた演技が板についてきた。若葉竜也、藤原季節はミニシアター系の映画への出演が多く最近よくみる俳優となってきた。今後も追っていきたい俳優リストに入れておくと良い。

本作、ひとつの仕掛けをスイッチとする作品として楽しく鑑賞出来る1本だ。

映画の評価
ハラハラワクワク
(3.0)
ドキドキ
(3.5)
考えさせられる
(4.0)
笑える
(1.0)
泣ける
(2.0)
総合評価
(3.5)

作品データ

©2020「くれなずめ」製作委員会

原題/

制作年/2020年

制作国/日本

時間/96分

ジャンル/コメディ

受賞歴/

原作/

配給/東京テアトル

監督/松居大悟

出演者/成田 凌 若葉竜也 浜野謙太 藤原季節 目次立樹 飯豊まりえ 内田理央 小林喜日 都築拓紀(四千頭身) 城田 優 前田敦子 近藤芳正 岩松 了 高良健吾

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