あらすじ
1939年2月、おびただしい数のスペイン共和党員がフランコの独裁から逃れようとフランスに押し寄せた。フランス政府は政治難民となった彼らを収容所に押し込め、冷遇する。そんな中、有刺鉄線で隔たれた憲兵と絵描きの間に友情が芽生える。1910年にバルセロナで生まれ、1995年にニューヨークで没した実在のイラストレーター、ジュゼップ・バルトリの人生を描いたアニメーション。
クロスレビュー
本作を見る前にヨーロッパ映画賞の受賞作品であることを調べていたので期待値高めでの鑑賞となる。戦争中に自分のおかれた悲しく、苦しかった出来事を物語を話すように孫に語りかける老人の姿がみていると胸が苦しくなる。アニメーションでありながらもリアルにあったことが描かれているので、まるで実写をみていたかのような感覚にさえなる不思議体験。鑑賞中、常に頭の中をよぎったのは、戦争をしている国の人間であったとしても戦争を望んでいるわけでもないということ。人が死んだり差別することをしたくてしていたわけではないんだということの確認作業。自分が生きるため、自分や家族を守るために必要なことになってしまったのだという悲しい現実。私にとって戦争は全く身近なものではなく知らない世界の出来事。だから想像するしかない。想像しよう、この作品を通して感じてほしい。自分のしらなかった瞬間のことを。本作、東京アニメアワードフェスティバル2021上映予定となっています。
激動の時代を生きたJosep Bartoliという画家・漫画家の半生を元に描いたフィクションであり、伝記映画。監督のAurelはフランスの漫画家であり、厳しい時代とJosepの半生を温かみのあるアートワークで見事に映像化している。ちなみにJosepとAurelには新聞漫画家という経歴が共通している。フランコ政権スペインからフランスに亡命した難民の話、と紹介されると重苦しい映画を想像しがちだが、実際には祖父が孫に語り聞かせるという形式でユーモアも差し込まれていて、現代の若者にも見やすい作品になっている。辛い収容所の話だけでは終わらない映画であり、Josepの半生を通して歴史と今を接続してくれる清々しさがある。監督曰く、もとはアニメーション映画を目指して作り始めたが途中で行き詰まったために、新聞漫画家としての経験から一枚の絵に様々な移動や動きを要約していく形で構成し直したらしく、アニメーション映画というよりはfilm dessineと呼ぶのがふさわしいと考えているようだ。監督の意図とは若干ズレるとは思うが、自分にとっては綺麗なバンドデシネ映画(bande dessinée, フランスの漫画)だなというのが第一印象で、音声も含めてアートワークとアニメーションの調和が心地よかった。
作品データ

原題/Josep
制作年/2020
制作国/フランス
時間/ 1 時間 14 分
ジャンル/アニメーション
受賞歴/ヨーロッパ映画賞2020 アニメーション映画賞受賞
原作/
配給/
監督/Aurel Jean-Louis Milesi
出演者/