現在開催中のイタリア映画祭2021(2021/5/13~6/13・6/17~7/18はオンライン上映)に登場した、ピエトロ・カステッリット監督のデビュー作。2つの家族のメンバーがそれぞれ少しずつ作用し合い、変化を生み出していく群像劇の見どころを探りました。
あらすじ
相反する社会的背景を持つローマの二つの家族の出会いと衝突をブラックな笑いで包んだ1作。ブルジョアでインテリ層のパヴォーネ家と、プロレタリアートでファシストのヴィズマーラ家。正反対に見える社会で平行して生きてきた両家がある交通事故によって交わることから、不穏な出来事が連鎖していく。
作品データ
原題/I predatori
制作年/2020年
制作国/イタリア
時間/109分
ジャンル/ドラマ
受賞歴/ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門脚本賞
監督/ピエトロ・カステッリット
出演キャスト/マッシモ・ポポリツィオ、マヌエーラ・マンドラッキア
イタリア映画祭公式サイト/http://www.asahi.com/italia/2021/
感想レビュー
109分間の映画ですが、5時間くらい観ていたような錯覚を覚えました。このボリューム感は何かと考えるに、登場人物の多さに起因しているのかもしれません。バイプレイヤーも含めたら、かなりの人数。そのため、色々と混乱してしまいがち。あの家族のあの人があの場所にいたから、こちらの家族のこの人はこういう目に遭ったという「袖振り合うも他生の縁」が実体化しているのが群像劇の醍醐味。そういう意味での面白さはもちろん、用意されています。
ただ、評価の高い脚本にもっとニヤリとできたかもしれないと感じるのは、筆者がイタリア語を理解できないためでしょう。本作の登場人物は言葉数が多いのです。そこが魅力の脚本ですが、その全てを字幕にするには字幕の規定文字数が足りないのかもしれません。翻訳のご苦労も感じます。イタリア語が分かれば、もっとブラックな笑いを見つけられたのかも……!
1991年生まれのピエトロ・カステッリット監督はイタリアの名優セルジョ・カステッリットのご子息とのこと。本作にも哲学者ニーチェ信奉者として、ピエトロ監督自身が登場しています。登場シーンで毒舌を撒き散らしている様子は、観客をも引かせるほどの勢いがありました。ラストのアイデアもなかなかの謎で、観客を煙に巻きます。
まとめ
女優陣の美しさやドレスのファッション性は目の保養になること請け合い。経済状態も価値観もまるで正反対の、労働者階級ファミリーとセレブ家族。彼らが互いに影響を及ぼし合う偶発性、会話劇の妙や、アホアホしい行動やジョークに満ちた喜劇性。そこにハマれたならきっと楽しい、独自のユーモアとペーソスの1本でありましょう。
(文:キタコ)