あらすじ
クレールは世界的な天才ピアニスト。夫でマネージャーのフレデリックと共に日々世界中を飛び回っている。子供は持たない、それが夫婦の共通認識だった。
ところが、パリ~ニューヨーク間のフライト中に緊急出産に立ち会ったフレデリックは、父になりたいとの強い思いに駆られ、クレールの避妊薬に細工をしてしまう。狙い通りクレールは妊娠、どんどんお腹が膨らんで…。
クロスレビュー

妊娠、出産の記憶が生々しく蘇る作品だった。妊娠中のつわりネタがあまりなかったけど…お腹が大きいとどれほど動きにくいかも最後の最後で突然のコントのようにボコンとでてきてコメディ映画だとしてもなんだかリアルな場面と適当な場面の差が激しすぎて作品全体としてのまとまりにかける展開だった。仕事が一生懸命したい女性の妊娠、出産も最近ではごく普通のことで全く特別なことではない。その観点からみても主人公の女性が旦那に頼りきりで自立出来ていないのも今後の子育てが心配になる。子供が望まぬタイミングで出来ても産むと決めた以上は責任を持って欲しいと願う。この作品、たぶんまじめにみたら負け。
紹介文で予想する内容からは逸脱しないが、その予想を飛び越えた感覚を味わうことができる怪作。倫理的に問題のある妊娠を妻に秘密にしながら夫がコメディシーンを繰り出し続ける前半は、共感性羞恥傾向の人は心の中で叫び続けることになるが、男女の役割やステレオタイプの逆転を活かしていてなかなか趣深い。映画のクライマックスは当然ながら出産シーンなのだが、それまでの非現実的な展開に反したリアルな映像で謎の感動を覚える。締めのシークエンスも感動の余韻を上手く引き出してくれる。
作品データ
原題/Énorme
制作年/2020
制作国/フランス
時間/101分
ジャンル/コメディ
受賞歴/カイエ・デュ・シネマベスト2020選出
原作/
配給/
監督/ソフィー・ルトゥルヌール
出演者/マリーナフォイス、ジョナサンコーエン