現在開催中のイタリア映画祭2021(2021/5/13~6/13・6/17~7/18はオンライン上映)に登場した最高なコメディ! LGBTQを題材にしつつも、家族たちの心模様にフォーカスが置かれて共感度が高まります。華のある俳優陣が集結した魅力いっぱいの1本をオススメします。
あらすじ
裕福でオープンマインドだが利己的なカステルヴェッキオ家と、保守的な価値観を持つ労働者階級のペターニャ家。対照的な家族が海辺の別荘で一緒に夏の休暇を過ごすことになる。実は、それぞれの家族の長であるトニとカルロだけが知っている秘密があった。そこから巻き起こる涙と笑いの大騒動。
作品情報
原題/Croce e delizia
制作年/2019年
制作国/イタリア
時間/100分
ジャンル/コメディ
監督/シモーネ・ゴダノ
出演キャスト/アレッサンドロ・ガスマン、ジャズミン・トリンカ、ファブリツィオ・べンティヴォッリョ
イタリア映画祭公式サイト/http://www.asahi.com/italia/2021/
感想レビュー
海辺の豪奢な別荘に集まった二つの家族。映画開始早々に秘密は暴露されるのですが、そこからの混乱が実に面白い! 特に最近はLGBTQ映画でこのパターンは多く見られますが、本作が優れているのはそれだけではないから。周りの家族の思いが丹念に描かれ、各人の過去や思いが見えてきます。そのストーリーが見事!
陽気なイタリアンが哀しみを抱えている表情は、とても印象的です。というのも、キャラクターがハッキリとしているからでしょう。海の男アレッサンドロ・ガスマンの色気はただただカッコよく。もはや名女優のジャズミン・トリンカの長女役は素晴らしいの一言。『ミエーレ』とは全く違った演技に脱帽です。飄々としたファブリツィオ・べンティヴォッリョの屈託のなさも映画を朗らかにしてくれました。
さらに、別荘のインテリアやお洒落な衣装は、さすがイタリアといったところ! 裕福さが溢れ出す家具調度の中でサッカーチーム・ ラツィオに熱狂する彼らの姿には、楽しさあるのみです。
まとめ
LGBTQをひとつのキッカケにして、家族のもつれた糸を各人が解こうと奮闘する気持ちが心に沁みます。しかも、しっかりとエンターテイメント。音楽のチョイスも小粋で、こちらも踊り出したくなったほど。家族それぞれの抱える思いの発露も秀逸です。タイトル通り、笑っているうちにホロリとするのですからたまりません。観客一人ひとりが誰かに感情移入できるタイプの作品かも。イタリアの海辺を旅したくなる、そんな家族喜劇です。
(文:キタコ)